男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました

殿下に同情を寄せていたら、バルドン公爵がエリーヌ嬢を肘で突き、せつく様子が見えた。

するとそれまで大人しかった彼女が、綺麗な声で話し出す。


「わたくしは先日、都で一番のデザイナーに舞踏会用のドレスを注文いたしました。デザイン画は出来上がったのですが、色で迷っておりまして……。
あの、殿下のお好きな色を教えていただけますか?」


つまり、殿下の好みの色のドレスを作って、舞踏会で着たいということを、エリーヌ嬢は頬を染めて話していた。

殿下に気に入られたいというその気持ちは恋心で、美女にこんなことを言われては、ほとんどの男性が舞い上がることだろう。

しかし大公殿下はニコリともせず、彼女にとっては期待外れの返事をする。


「なぜ俺の好みを知る必要がある。自分の好きな色の服を着ればいいだろう」


「そう、ですわね。申し訳ありません……」


小声で謝り、肩を落として俯いたエリーヌ嬢。

バルドン公爵は鼻息荒く、大公殿下に不満をぶつける。


「殿下は、なにゆえエリーヌに冷たく当たられる! 色を答えるくらい、なんの不都合もないではありませんか。娘のいじらしい気持ちを汲んで下され!」



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