男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
褒められても喜べずにいるのは、パニックに落とされているせいだ。
ドキドキしすぎて、もう限界。
殿下の声が、腕が、唇が……このままでは、気を失ってしまいそう……。
意識が遠のきそうになっていたら、殿下は急に私を離して立ち上がる。
失神せずに済んだ私はハッとして、慌てて足元に落とされていたタオルを拾って、体に掛けていた。
すると、真後ろにフッと笑う声が聞こえる。
「今日のところは、これで許してやろう。
さて、リリィのことをどうするか……」
そ、そうだ。リリィの恋心をどうするのかが、緊急課題だ。
色々と意味深な言葉を言われた気がするけれど、それについて考えるのは後回しにしないと。
なんとか気持ちを立て直し、後ろを見ずに意見する。
「事情を説明すべきかと思うのですが。このまま騙し続けるのは、心苦しいです」
リリィは私への恋心を抱いたばかり。
女であることを教えるのは、なるべく早い方がいいと思う。
時間を置けば置くほど、傷つける程度が大きくなりそうな気がしていた。
殿下は少し考えてから「そうだな」と同意してくれた。
「秘密を知る者を増やしたくないが、仕方ない。リリィには俺から話そう」