男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
まさかという思いで「僕も行くのでしょうか?」と尋ねたら、「当然だ。お前がいないと俺が退屈になる」と返され、私は慌てた。
「し、しかし、着ていく服がありません」
青の衣のままでいいと言うなら、問題ないけれど、まさか会場内に護衛の騎士を連れて入るとは思えないし、今日の私はフォーレル家の跡取りという立場で殿下に付いていくのだろう。
舞踏会といえば、燕尾服だ。
持っていないし、急に言われても用意できないから、どうすればいいのか……。
うろたえていたら、「心配いらない」という声が降ってきた。
「お前の燕尾服は作ってある。見せてやるから、執務室まで来い」
リリィに挨拶してから中庭を出て、執務室まで行く。
ドアをノックすると、クロードさんがいつもの笑顔で迎え入れてくれた。
「失礼します」と中に足を踏み入れた私は、すぐに燕尾服を目にする。
壁際に仕立て屋にあるような木目のマネキンが二体置かれ、殿下と私のものと思われる燕尾服が着せられていた。
大きい方の燕尾服は藍色で、胸元にはたくさんの勲章が付けられている。
小さい方は若草色。同じ色の蝶ネクタイも用意されていた。