男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
三階建ての白壁の建物で、屋根は藍色の瓦。柱のような尖塔が四隅にそびえている。
そこにモンテクレール大公国の旗が、はためいていた。
青地の中央に三本の白いラインを横に引き、その上に雄々しい獅子が描かれている。これが大公国の国旗だ。
門の内側に入っても建物までは遠いはずなのに、すぐ近くにあるのではと錯覚するほどの巨大なお屋敷だった。
我が家の屋敷を、ボロくても大きくて広いと思っていたのが恥ずかしくなる。
やっぱりうちは落ちぶれた田舎貴族だという自覚を新たにすると、自然と目線が自分の服にいく。
襟元を緑色のリボンで結んだ白いブラウスに、若草色の上着。
ズボンとブーツはダークブラウンで、家にあった一番上等な服を着て来たつもりでいた。
しかし、この服装で失礼はないだろうか?と、自分の身なりを気にしてしまった。
失礼だとしても、今さらどうにもできないけれど……。
馬車は速度を落としてゆっくりと進んでいる。
右側には美しい庭園が広がっていて、花壇や噴水、東屋に大きな池もあった。
万が一に備えての消火用の池だと思われるが、鴨が水面に遊び、のどかな光景だった。
左側は……。
ジャコブを押しのけるようにして左の窓にへばりつき、思わず「キャア!」と歓声を上げた。