男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
「ジャコブ、あれが青の騎士団の詰所ね!」
「そうですが……ステファン様、どうかご自分の席にお座りください。膝に乗られては重たいです」
石積みの要塞のような雰囲気のある建物が、ドンと構えていた。
見張り台のような、一際高い塔が付いていて、そこにはためく旗は、青地に盾とクロスした刀のマーク。本で見た青の騎士団のマークだ。
残念ながら出入りしている騎士の姿は見えないが、旗と建物だけで充分に興奮させられた。
できれば馬車を止めて、今すぐ見学に行きたい。
しかし、口には出さず、振り向いてジャコブの顔を見ただけなのに、少々呆れた顔で首を横に振られた。
やっぱりダメだよね……大公殿下に挨拶も済ませていないのだから。
馬車は青の騎士団の詰所前を通り過ぎ、諦めた私はやっと自分の席に戻った。
お屋敷の真ん前まで来ると、改めてその巨大さに目を丸くする。
屋敷の前には、来訪者の物と思われる立派な馬車が五台も停車していた。
私の乗った馬車もその隣に止まり、御者が扉を開けてくれた。
馬車を降り、広々とした玄関アプローチを上って屋敷の中に足を踏み入れる。
外観に違わず中身も豪華絢爛で、一応貴族の私でも気後れするほどだ。
大理石の床に壁を飾る彫刻や絵画。
天井は高く、明かりを灯す壁掛けランプひとつをとっても、精緻な金細工が施されてなんと美しいことか。