男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました

「こちらでございます」とジャコブが先頭に立ち、私を案内してくれる。

内部は回廊になっているようで、螺旋階段の裏の明かり取りの窓から、夕日を浴びる噴水と広い芝生の中庭が見えていた。

人が十人並んで歩けるほどに幅のある、絨毯敷きの螺旋階段を上り、二階へ。

謁見の間は二階にあるということなのだが……どこまで行くのだろう。


長い長い廊下を、キョロキョロしながらジャコブに付いて歩く私。

忙しく働く使用人たちが、私に気づくと足を止め、会釈してくれる。

廊下の両サイドには、金色の鋲を打った革張りの立派なドアが不規則間隔にズラリと並び、この屋敷全体の部屋数は、軽く二百を超えそうな気がしていた。


廊下の角を曲がる手前で、ジャコブはやっと足を止めた。

ということは、この扉の先が謁見の間なのだろう。

ジャコブがノックすると、すぐにドアが開けられ、黒い執事服姿で、焦げ茶色の髪を後ろでひとつに束ねた、見目好い青年が顔を覗かせた。

廊下に出て一旦扉を閉めた彼は、私を見るとニッコリと愛想のよい笑い方をして、お辞儀をする。


「フォーレル伯爵のご子息、ステファン様でいらっしゃいますね?
私は大公殿下付きの執事長、クロードと申します。以後、お見知り置きを」


彼は二十五歳くらいに見えて、その若さで執事長を務めていることに驚いていた。


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