男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
ロドリグはさっきまで殿下が座っていた椅子に腰を下ろし、私も仕方なく隣に座る。
警戒心が顔に表れていたためか、ロドリグはまず、鼻で笑ってこう言った。
「安心しなよ。俺は殿下と違ってノーマルだから。男を食べたくはない」
そういう意味での警戒ではないのにと思いながらも、「殿下は男色ではありません」と、それだけは否定しておいた。
「それはどういう意味かな?
ステファン君は、まだ殿下に食べられていないということかな?」
「僕と殿下の間にからかわれるような関係は一切ないという意味です。これ以上、殿下を侮辱するおつもりでしたら、僕はこれで失礼させていただきます」
いずれバルドン公爵家を継ぐこの男には、いい顔をしておいた方が得策だろう。
しかし、私は我慢が難しいほどに腹を立てていた。
自分だけがバカにされる分には一向に構わないが、殿下への侮辱は許しがたい。
今、腰に剣がなくて本当によかった。
もし帯剣していたなら、引き抜きたくなっていたところだ。
立ち上がろうとしたら、肩を押さえられ、引き止められた。
「そう怒るなよ。分かった。君と殿下の関係は健全なものとしておこう。弟のように可愛がられていると言った感じかな?」