男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
アミルカーレは優秀で、すぐに王の才覚をみせる。
大公殿下が病気でも、政治が滞ることなくスムーズに進められる様を見て、誰もが彼の能力を認めるところだが、一部には不満に思う貴族もいた。
カリスマ性のある高い指揮力は、ともすれば独善的だと捉えられる。
アミルカーレは下の者の意見を聞かない独裁者になるのではないか……そんなふうに危惧する貴族が現れたのだ。
一方、弟のアベルは、物の考え方が柔軟で人当たりがよい。
悪く言えば人の意見に左右されやすい性格なのだが、弟が大公の爵位を継いだ方が意見を聞いてもらえそうだと、一部の貴族が期待を持つ。
大公の爵位は必ずしも長男が継ぐとは決められていないこともあっての希望だ。
ヒソヒソと話されていたことは、やがて大きな論争となり、大公家を支える貴族たちは兄派と弟派で二分することとなる。
それまで仲の良かった兄弟も、周囲に対立を煽られると、次第に兄が弟を政務から遠ざけるようになり……。