男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
大公家が落ち着かないと、都も騒つく。
城下街の治安は悪化して、青の騎士団が捕らえても捕らえても、悪人が蛆のように湧いて出る。
その中で都を最も不安に陥れたのは、邪視を持つ少年だった。
毎夜、変死体が発見されるのは、その少年のせいだと噂され、人々は息を潜めて夜を過ごさねばならなかった。
ロドリグの話の途中で、私は「邪視とは?」と疑問を挟む。
ロドリグはフンと鼻を鳴らして「君は無知だな」と馬鹿にしてから、教えてくれる。
「黒目の中に三重の輪がある、それが邪視だ。
一秒目を合わせれば、不運に見舞われ、二秒で病に冒される。五秒目を合わせたら、即死。
忌み嫌われ、恐れられる邪視は、三百年前の文献にも登場している」
五秒、目を合わせたら即死……なんて恐ろしい目だろうかと、私はブルリと体を震わせた。
そして、さっきまで近くでヒソヒソと話していた貴族たちの会話を思い出し、心配していた。
七年前と同じように、また邪視を持つ少年が現れたと言っていたけど、大丈夫だろうか……。