男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
去り際のロドリグに、「君も殺されないようにねと言われました」と話して説明を終えたら、殿下はやっと口を開いた。
「俺に殺されると思って、避けていたのか?」
「そんなことは! いえ……実は、ほんの少しだけ……申し訳ありません。信じたくないのに、否定できる根拠を見つけられなくて……」
しどろもどろに返答してから、「あの、私が聞いた七年前の話は本当なのでしょうか?」と、恐る恐る問いかけてみた。
違うと言ってほしかった。弟を殺してはいないと。しかし……。
殿下は鋭い視線を私に向けて言った。
「そうだ。アベルは俺が殺したようなものだ」
「そんな……」
目を見開く私に、殿下は吐き捨てるように言う。
「軽蔑したければ、するがいい」
それだけ言って話を終わらせ、立ち上がろうとするから、私は慌てた。
「待ってください! なにか事情があったんですよね? お願いです、どうか全てを教えてください。私は殿下をお慕いしております。この気持ちを壊したくないのです!」
真実を知りたい気持ちでいっぱいで、恋心を告白したことに恥ずかしさすら感じられずにいた。
殿下は一瞬、驚いたように表情の厳しさを解くが、すぐに険しさを取り戻して、椅子に座り直した。
「そこまで言うなら、教えよう。
全てを知ったところで、俺への信頼は回復しないと思うが……」