男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました

一番奥の牢の前には青の騎士ふたりと、バルドン公爵とバルドン家の護衛兵がいた。

「叔父上」とアミルカーレが声を掛けたら、バルドン公爵が上機嫌で近づいてくる。


「ついに捕らえたぞ! ワシの睨んだ通りだった」


バルドン公爵の説明によると、カブレラ公爵の屋敷を見張らせていたら、殺人と窃盗で指名手配中の男が、目に包帯を巻いた少年を連れて夜の街にこっそり出てきたというのだ。


「やはり黒幕はカブレラだった。邪視の少年を放って都を不安に陥れ、次期大公がアミルカーレでは不安だという声を増幅させようと企んでおったんだ」


バルドン公爵は得意満面だが、アミルカーレは、はたと考え込む。

叔父がやってきて、カブレラ公爵と邪視の子供の話をしたのは、昼間のこと。その夜に、こうして少年を捕まえたとは、随分と都合のよい話ではないか。

それに気づくと、まさかという思いが湧く。

カブレラとバルドンは同じ上級爵位。権力も財力も大体同じくらいだ。

ふたりは度々意見を違えていたことだし、この一件を利用して、叔父がカブレラ家を排除しようとしているのでは……。


しかし、疑うに足る証拠はなく、彼は叔父を信じたかった。

父の片腕となり、都を統治してきたのはバルドン公爵で、父が病床に伏してからはアミルカーレに政治を教えてくれた人だからだ。

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