男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました

窓辺に立つ殿下の横顔は酷く苦しげで、泣きたいのを我慢しているように見えた。

慰めようとしたが、言葉が見つからない。

どんな言葉も、殿下の苦しみを和らげるには足りないと感じていた。

殿下は睨みつけるように窓の外を見ながら、静かな声で話を締めくくる。


「アベルが死んで、九日後に父上も亡くなった。モンテクレールの名を持つ者は、俺と妹だけになってしまった。
後を追いたくても、リリィを残して逝くわけにいかない。国を民を守らなければならない。
だからこうして生きている。弟を殺した罪を背負いながら」


濡れているのは外の景色だけで、殿下の頬は乾いていた。

それを見て、泣いたらいいのにと、私は思う。

涙を流せば、少しは心が楽になるのではないかと。

どんなに辛くても泣かない理由は、強い大公でいなければならないと、自分に言い聞かせているせいだろうか?

弟君を亡くしてから、ますます強くあろうと心に鎧を着せているのだろうか?


威風堂々とした姿の裏に秘められた、悲しみの過去。

銀色の髪をして、黒い棒タイを締める殿下を見ながら、私の目からは涙がポロポロとこぼれ落ちていた。

たまらず駆け寄って、その体を横から抱きしめた。

すると、私の頭に温かい手が乗る。


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