男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
「なぜ、お前が泣く。アベルの死を悲しんでくれるのか?」
「いいえ、違います。弟君を哀れに思いますが、私は殿下のために泣いています。泣くことのできない、殿下の代わりに……」
殿下のために私ができることは、苦しみを理解して泣くことだけだった。
役に立てない自分に嫌になりながら、殿下の腕に縋って涙を流す。
すると腕を解かれ、正面から抱きしめられて、心臓が跳ねた。
「ステファニーは優しいな。こんな話を聞かせても、まだ俺を信じてくれるというのか」
「もちろんです。さっきまで、僅かなりとも疑った自分を恥じています。
これからは、なにがあっても殿下を信じ、お守りすると誓います」
私は青の騎士であり、殿下の護衛が任務。
その自覚があるので、『お守りします』と至極真面目に誓ったわけだが、フッと笑われてしまった。
「お前に守られたくない」
「え!? それは……」
青の騎士、失格という意味だろうかと驚いて、殿下の腕の中で顔を上げたら、直後に唇を奪われた。
押し当てられた唇はすぐに離れて行き、甘く煌めく青い瞳と至近距離で見つめ合う。
今のは、キス……だよね?
突然で一瞬の出来事に、状況を把握するまで時間を要したが、確かにキスだったと理解した後は、涙も引っ込み、慌てふためく。