男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました

鼓動が振り切れんばかりに速度を上げ、顔から湯気が出そう。

殿下の腕の中で目を泳がせて、オロオロしていたら、「俺の目を見ろ」と命じられた。

視線を戻すと、柔らかな微笑みが。


「お前に守られるのではなく、俺がお前を守る。二度と愛する者を失わぬように」


「愛する者……え? わ、私のことですか!?」


「他に誰がいる。今までかなり意思表示をしてきたつもりでいたが、気づかなかったのか?
恐ろしく鈍い奴だな」


呆れたように言われてしまったが、眼差しの優しさは変わらない。

それでも私はまだ驚きの中にいて、喜ぶこともできずにいた。


可愛がってもらっている自覚はあったけれど、愛玩犬のようなものだと思っていた。

大公家と伯爵家では大きな身分差があるし、特にうちは落ちぶれた田舎貴族。殿下に見初められるはずがないと思い込んでいた。

しかも私は、常に男装という、おかしな女だし……。


これは夢だろうか?と、思わず自分の頬をつねると、殿下が噴き出した。


「夢じゃない。いずれお前を妃にするつもりだ。フォーレル家に教育の義務を果たしてもらわねばならないから、二年半以上先のことになるが」


先のことまで考えているということは、本気なんだ……。
冗談じゃなく、私なんかを大公妃に……。


殿下も私をお好きだという現実がやっと心に染み込んで、じわじわと喜びが湧いていた。

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