男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
笑顔を向けようとしたその時、空を縦に裂くように稲光が走り、直後に屋敷を揺らすほどの落雷の音が轟いた。
思わず悲鳴をあげた私を、殿下は抱きしめて心配する。
「怖いのか?」
「いえ、驚いただけで、もう大丈夫です」
「そうか。近くに落ちたな……火災が起きているかもしれない。青の騎士を偵察にいかせるか」
私を離した殿下は、ドアに向けて歩き出した。
その後を追う私の中に、不安が広がっていく。
落雷のお陰で、喜んでばかりじゃいられない問題に気づいたからだ。
バルドン公爵は、エリーヌ嬢を妃にしたがっている。
簡単に諦めるように思えないし、殿下がエリーヌ嬢を拒み続けていたら、なにをしてくることか……。
それに加えて今、都には、七年前と同じように邪視を持つ少年が現れたという噂もある。
それらが落ち着かぬうちには、恋の成就に浮かれてはいられないのだ。