男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
クロードさんが開けてくれたドアから室内に足を踏み入れた私は、驚いて目を丸くする。
謁見の間は眩しいほどに煌めくシャンデリアの明かりで、壁を装飾する金細工が輝いていた。
どこもかしこも豪華絢爛。
しかしそれが驚きの理由ではなく、赤絨毯の敷かれた先の壇上の玉座に頬杖をついて座るのが、予想に反して随分と若く、美しい青年であったからだ。
二十五歳くらいに見えるけど、まさかこんなにお若い方なんて……。
滑らかな生地の藍色の上着は、襟元と袖口に金の刺繍が施されている。
ブラウスの襟止めはシンプルな黒い絹の棒タイ。
ズボンもブーツも黒で、引き締まった細身の体躯にピッタリとフィットしたデザインだった。
そしてなにより目を惹くのは、銀色の髪だ。
耳下辺りで切られた髪が、健康そうな肌色の頬に薄い影を落としている。
予想外の若さに加え、そのような髪色の人に今まで出会ったことがなかったから驚いていた。
なんて美しい……。