男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
再び合わさった視線に心臓がまた跳ねて、美しい絶対君主に見据えられていると思うと、顔が勝手に熱くなる。
そんな私に大公殿下は、観察するような視線を向けていたが、急にフッと表情を緩め、その口元には薄く笑みが広がった。
「なにを赤くなっている。
まるで少女のようだな」
「えっ、あ、あの……」
ギクリとして、早くも見破られたのではないかと動揺したが、そうではない様子。
大公殿下は、私を兄のステファンとして話を続けていた。
「十六だと聞いていたが、それにしては随分と華奢な体格だな。健康なのか?」
「は、はい。病気はほとんどしたことがありません。ただ、食が細いもので……」
「そうか。だが、ここでは無理にでも食べるようにしろ。教育とは、座って学問するだけではない。体力を使う馬術や剣術も習うことになるからな」
剣術と聞いて、私の顔はパッと明るくなる。
もしかして、教師は青の騎士団なのではないだろうか?と考えたら、興奮してきた。
それまでの緊張はどこへやら。
ムクムクと湧き上がる期待と喜びで、つい足元のラインを踏み超えて大公殿下に一歩近づいてしまう。
「剣術を教えて下さる方は、青の騎士団でーー」
そのとき、私の質問を遮るように、突然目の前に男がひとり飛び出してきた。