男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
ニヤニヤしながらロドリグが言ったことに、私は衝撃を受けていた。
彼の嘘に騙されただけだと思っていたが、違うみたい。
舞踏会の日に聞いた話は、都の多くの人が信じている噂話だった。
ということは、殿下は七年も汚名を背負っているということなのか……。
ロドリグへの怒りより、殿下の汚名を心配する気持ちが強くなる。
「みんなに真実を話さなければ」と独り言を呟いたら、「それは駄目だよ」と止められた。
「弟君の死因は、城内で乗馬の練習中、落馬して石に頭を打ち付けた……ということにされている。大公殿下が出した公式な発表だよ」
「えっ、どういうことですか!?」
「橋が切れたと、言えなかったからだよ」
ロドリグの説明によると、その橋の建設には、モンテクレール家と付き合いの深い、隣国の王家が関与しているらしい。
隣国は鉄鋼業が盛んだ。
百馬力で引いても切れないと評判の、鉄のワイヤーを贈られ、技師も隣国の王家から紹介されて、その橋は作られたということだ。
つまり、その橋は隣国との友好の象徴。
国同士の関係悪化を恐れ、ワイヤーが切れて橋が落ち、弟君が亡くなったと、発表できなかったという話だった。
「俺は父上から聞かされて真実を知っているけど、他の貴族は知らない情報だよ。
君は殿下に聞いたのかな? お気に入り以上の信頼関係だな。本当に殿下は男色だったりして……」