男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
男色疑惑を否定することも忘れ、私は考えの中に沈んでいた。
本当の死因を隠され、落馬したと言われても、人々が納得できなかったのは頷ける。
アベル様は十六で、今の私と同じ歳だった。
殿下の弟君でもあることだし、きっと上手に馬を乗りこなしていたことだろう。
それなのに、城内の安全な馬場で落馬は嘘臭い。
後継争いという背景や、ちょうど邪視の少年が捕らえられた後だということもあって、殿下の弟殺しの噂が広まってしまったのか……。
真実は違うのに……。殿下はそんな冷酷な人じゃないのにと悔しくて、私は唇を噛み締めて俯いた。
するとロドリグの足が一歩、私との距離を詰めるのを目にする。
ハッと顔を上げると、拳三つ分もない近距離にある、彼の顔。
中腰で私と目の高さを合わせ、ジロジロと観察するように見てきた。
慌てて飛び退くように後ずさり、その無礼な行為を非難した。
「なにをするんですか!」
「まだなにもしてないよ。
舞踏会でも感じたけど、随分と可愛い顔をしているものだと思ってね。歳はいくつ? 十三歳くらい? 青の衣を着ているのは、騎士ごっこかい?」
自分の顎に手を添えて首を傾げるロドリグの顔は、私を馬鹿にするようにニヤついていた。
一度消えた怒りが復活し、私はすぐに言い返す。