男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
「僕は十六です。子供ではありません。騎士ごっこと言ったことを訂正して下さい!」
「十六? それにしては随分と華奢だね。喉仏も出てないし声も高い。女の子なら、十六でも納得できるけど……」
キツネ目がさらに瞳の幅を狭めて、怪しむように私を見ている。
ギクリとした私は、彼の視線を避けて背を向けた。
「華奢な体つきは家系です」と嘘をつき、「もう用はないので失礼します」と、無理やり話しを終わらせる。
これまで私は性別を疑われることなく、城での生活を無事に過ごしてきた。
それはきっと、貴族の娘が男装して教育を受けに来るはずはないという先入観のお陰だろう。
でも最近『マズイな』と自分で感じるときがある。
鏡を見るたび、城にやってきた初夏よりも、女っぽい顔や体つきになっている気がして……。
これ以上の気づきを与えないようにと、私は男性のように大股で歩き、ドアノブに手をかけた。
しかし、ドアノブを回しても開けられない。
ロドリグが真後ろから腕を伸ばし、ドアを押さえているからだ。
さらには私を捕まえようと、もう一方の手を腰に回してこようとするから、慌ててサッと横にずれて体を反転させ、壁に背を当てた。