男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
身の危険を感じ、自然と手が剣の柄を握る。
しかし、意外と俊敏に動くロドリグが片手で私の抜刀を阻止し、もう一方の腕を私の顔横に突き立てた。
これでは剣が抜けない……。
「俺を斬っても得はないからやめときなよ。バルドン家の跡取りを傷つければ、いくらお気に入りと言えども、殿下は庇いきれないと思うよ」
剣の柄から手を離すしかない私を、キツネ目がニヤついて見ていた。
まるで面白いおもちゃを見つけたと言うように。
斬ることができないならと、その顔に向けて拳を振り上げたが、難なく手首を掴まれ、壁に押さえつけられてしまった。
剣術は得意でも、体術は苦手。
男女の筋力の有意差がモロに表れるからだ。
この前ジェフロアさんに、剣にばかり頼らず、体術も稽古するようにと言われたことを思い出し、それをしなかったことを後悔していた。
剣さえあれば私は強いと思っていたのは、間違いだったみたい……。
冷や汗がこめかみを伝って流れ落ちるが、ここで負けるわけにいかない。
力で敵わないなら、言葉で彼を制しようとした。
「僕は男です。僕に手を出せば、あなたが男色だという噂を広めます」
「それは困るな。俺に懐いてくれる女の子たちを泣かせてしまうよ。でも君が本当は男じゃなかったというなら……問題ないよね?」
「なにを馬鹿なことを!」
「ムキになると、ますます怪しく感じるね。女じゃないというなら、服を脱いで見せてよ」