男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
私の必死の説得で、殿下はなんとか殺気を堪えて、ロドリグから手を離してくれた。
ドサリと床に落ちるように尻餅をついた彼は、もうニヤついていられなかった。
色白の肌を青く染め、乱れた呼吸を整えながら殿下を見上げている。
怯えて微かに震える彼に、殿下は冷たい声で言った。
「ステファンは、偽りなくフォーレル家の跡取りだ。教育生の身元は、しかと確認して城に招き入れている。お前は俺の調べ方に、不備があったと言いたいのか?」
「いえ、決してそのようなことは……」
「ならば二度とこのような真似をするな。不愉快だ。しばらくの間、城内に入ることを禁ずる。さっさと出て行け」
そのとき廊下の奥の方から、「ロドリグどこにいる? 帰るぞ!」と怒鳴るバルドン公爵の声が聞こえてきた。
立ち上がって一礼したロドリグは、父親に助けを求めるかのように、走って謁見の間から出て行った。
開けっ放しのドアを閉めたのは殿下で、鍵までかけてから、振り向いて私を胸に抱きしめた。
たちまち心臓が忙しく働き始め、顔の火照る私。
謁見の間でこんなことをしてもいいのだろうか?と戸惑う気持ちもあるけれど、それ以上に嬉しくて、私も殿下の背に腕を回してみた。