男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
「ありがとうございました」と、助けてもらったことにお礼を口にすると、「そんな言葉では足りないな」と言われてしまう。
どう言えばよかったのか……。
返事に困る私を笑い、殿下は耳元で甘く囁いた。
「これからは片時も俺から離れないと誓え。
沐浴も、寝るときもな」
「えっ!? それは、ちょっと……」
冗談めかした口調だったので、本気ではないと分かる。
それでも沐浴と言われて、殿下に髪を洗ってもらった、あのときを思い出してしまう。
まだ入ったことのない殿下の寝室に呼ばれる自分も想像し、慌てふためいた。
こんな風に、いちいち慌てる私は子供みたい。
殿下に釣り合う女性になりたいなら、こういう場合でも落ち着いて受け答えができないと……。
そう思って心を落ち着かせるために、一旦、離れようと試みる。
しかしそれを許してくれず、殿下の腕に余計に力が加わり、苦しいほどに抱きしめられた。
「俺から離れるな。心配なんだ。ステファニーは時折、予測不能な行動をとるからな」
予測不能って……。
自分では青の騎士としての規律を守り、教育生として勉強もして、真面目にやっているつもりでいた。
殿下の指示にも従順に応じているつもりでいたけれど……なにか困らせるようなことをしているのだろうか?