男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
「あの、私はどうすればいいのでしょう?
どうしたら殿下に、ご心配をかけずに済むのでしょう?」
逞しい腕の中から問いかけると、少しだけ身体の距離を離され、青く美しい瞳に見つめられた。
優しく微笑むその瞳に反比例して、口の端はニヤリと吊り上っている。
「すぐにでもお前の全てをもらい受けたいが……それができないのならば、今は愛してると言ってくれ。俺だけを愛していると」
途端に耳まで熱くなる私。
きっと今朝の食事に出されたトマトスープよりも、赤い顔をしていることだろう。
『お慕いしています』となら口にできても、それは、ちょっと……。
恥ずかしさに言い淀んでいたら、額同士がコツンとぶつかり、至近距離で「言え」と命令された。
「私は、殿下を……あ、愛しております……」
顔から火を噴きそうな思いだが、なんとか愛の言葉を口にしたら、直後に唇を奪われた。
髪紐を解かれ、殿下の右手が私の髪に潜り込む。
顔を逸らせないように鷲掴まれ、もう一方の手で強く腰を引き寄せられた。
腹部や太ももが、殿下の下半身と触れ合って……。
強引なキスが嬉しいと思うのは、一昨日よりも昨日、昨日よりも今日と、日を追うごとに、より強く深く惹かれていく自分に気づいているからだろうか……。
銀の髪から香るバラの香りにうっとりと包まれて、成熟していく恋心を感じていた。