男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
恐らくその人は隠れていたわけではなく、ずっと壁際で私を見張っていたのだと思う。
しかし、気配を消していたからか、それとも大公殿下の存在が大きすぎるのか、私は護衛の存在を認識できていなかった。
私がラインを踏み越えたことで、職務を果たすために飛び出してきた彼。
その服装は二本の黒い縦ラインの入った、目の覚めるような青の上衣。
丈は膝下までと長く、動きやすいように横にスリットが入っている。
腰は黒い革のベルトで締められ、ズボンとブーツは黒。
胸元には青の騎士団の紋章、盾とクロスした剣のマークが金糸で刺繍されていた。
鋭い眼光で、私を不審者として睨みつける青の騎士。
その右手は剣の柄に掛けられ、抜刀寸前の様子だが、私はそれに恐怖するのではなく、喜びのあまりにその場に飛び跳ねた。
「青の騎士団の方ですよね!
うわ〜すごい、本物だ! 本で見た通りの衣装で、なんて素敵で凛々しいの!」
謁見の間がおかしな空気に包まれていることにも気づけず、私は憧れの騎士の腕にペタペタと触れて、はしゃいでいた。
青の騎士は私より少し年上に見える若い男性で、困惑した表情で、剣の柄に手を掛けたまま動きを止めている。
すると騎士の後ろから、笑い声が響いた。