男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました

残念ながら、バルドン公爵が関わっていたとする直接的な証拠はまだ得られず、バルドン家の執事も口を割らないみたい。

ハミンがバルドン公爵を知っていたならよかったけれど、囚われていた間はほとんど目に包帯を巻かれていたし、ボゾネの残党としか会話をしていなかったようだ。

殿下は諦めないと仰っていたから、調査と取り調べは続くのだろうけど……。


紅茶のカップを置いて、私は立ち上がった。

今日の取り調べで、なにか状況が変わっていないかと気になって。

今までなら、謁見の間での護衛に私を付けてくれた殿下だけど、今はその任務にジェフロアさんが当たっている。

バルドン公爵は帯剣を許されているから、逆上した場合、なにかあるかもしれないと考えてのことだ。


私よりジェフロアさんが護衛についた方が安全なのは確かで、殿下のお側にいたくても、そう言われたら引き下がるしかない。

その代わりに私に与えられた任務といえば……ハミンとリリィの相手といったところだろうか。

ふたりは懐いてくれて可愛いと思うけれど、弟と妹の世話を押し付けられた気分で、少しだけ不満だ。

私も殿下のお役に立ちたいのに……。

そういう思いで、ジャコブにひざ掛けを渡すと、リリィに言った。

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