男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
クロードさんは紅茶を用意してくると言って、廊下を北側へと進んで行った。
私は殿下に付いて執務室に入る。
奥の長椅子にドサリと腰を下ろした殿下は、疲労が溜まっているのか、長い息を吐き出していた。
長椅子の殿下の隣に、私はちょこんと腰を下ろす。
初めてこの長椅子に座ったとき、男性と、しかも大公殿下と並んで座ることに抵抗を感じたが、今はここが私の定位置のように思える。
殿下の隣は心地よく、ホッとしつつも、ドキドキと胸は高鳴っていた。
願わくば、これから先もずっと、殿下の隣は私の席であってほしい……。
整った殿下の横顔を見ながら、自分の中にある、独占欲のような想いに気づいて頬を赤らめる。
すると視線が合い、フッと柔らかい微笑みをくれてから、殿下は私の顎先を摘んだ。
「なんだ、その顔は。まるで襲ってくれと言わんばかりだぞ」
「襲う!?」
その言葉の意味は、斬りかかることじゃなく、男女の営みのことだよね……。
こんな私でも、それくらいの知識は持ち合わせている。
決してそんな破廉恥な想像をしていた訳じゃないと、首を横に振って見せたが、正直に言うと、少しだけ期待もしている。
押し倒されては困るけど、キスはしてほしいかな、と……。