男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
不安になって「私の性別のことですか?」と尋ねると、殿下は頷いた。
しかし深刻そうな顔ではなく、「心配するな」と優しい声で言ってもらえる。
「くだらないことを言うなと、叱っておいた。誰がお前の正体を調べさせるものか。
その点は安心していいが、この前のような目に遭わぬよう、バルドン家の者とふたりきりになるな。分かったな?」
「はい」
殿下が力強く言ってくれたお陰で、不安はすぐに解消された。
ロドリグは城に入ることを禁じられ、まだそれが解かれていないから、しばらく顔を合わせることはないだろう。
ということは、バルドン公爵とふたりきりにならないように、気をつければいいだけか。
ふむふむと納得し、紅茶のカップに口をつけて別のことも考える。
もしかして、私が謁見の間での護衛の任から外された理由は、私を公爵から遠ざける目的もあってのことでは……。
殿下の思い遣りに感謝しつつ、関わらせてもらえないと不満に思っていた浅慮を恥じていたら、ひとり掛けの椅子からクロードさんが立ち上がった。
殿下のカップに二杯目の紅茶を注ぎながら、「その件だけど」と話し出す。
「ロドリグ殿の、城内立ち入り禁止の命令を解いた方がいい気がするんだ」
「なぜだ?」
「バルドン公爵より息子の方が、ボロを出しそうな気がして。ロドリグ殿はお喋りだから、公爵が隠したい情報でも、うっかり口にすることがあるかもしれないよ。取り調べに同席させてみたら、どうかな?」