男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
階段を上がる足音が聞こえたときには、男は盗品の入った麻袋を落とし、両手で剣の柄を握りしめ、私の剣を辛うじて防いでいるといった苦しい様子。
全然、大したことない腕前ね……。
私を襲うなら、もっと強くなって出直して来なさいよと文句を言いたい気分でいた。
力の差は歴然で、開け放たれていたドアからランプの明かりが室内を照らしたときにはもう、勝負はついていた。
男の剣は弾かれて床に落ち、壁に背をつけて逃げ場を失った状態で、夜盗は鼻先に私の剣を突きつけられている。
最初とは逆になってしまったということだ。
髭面の強面で「お、お助けを……」とブルブル震えるその様子は情けなく、私を呆れさせるだけだった。
それから数時間が過ぎ、新鮮な朝日が邸宅内を照らしている。
白いテーブルクロスを掛けた大きなテーブルには、パンとバターと野菜のスープ。
家族四人で食卓を囲み、貴族にしては質素な朝食を口にしながら、私は両親に叱られていた。
「夜盗を捕らえたのは、これで五度目だ。
我が娘ながら、なんと情けない」
「ステファニーはもう十六歳なのよ?
そろそろ男の子ごっこをやめないと、変な噂が広まればお嫁に行けなくなってしまうわ」