男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
私から手を離した大公殿下は、背を向けて玉座に戻り、豪華な椅子にドッカリと腰を下ろした。
「クロード、部屋へ案内して、ここでの生活を教えてやれ。ジャコブ、報告を聞こう」
声をかけられたジャコブは「はっ」と返事をして玉座に歩み寄り、片膝をついて私を迎えに行ったときの状況を説明し始めた。
私はその様子を見ながら、まだ同じ位置に立ち尽くしたまま。
家族以外の男性に顔を触られたのは初めてで、頬の赤みは引きそうになく、動悸も収まりそうになかった。
するとクロードさんに、後ろから呼びかけられた。
「ステファン様、お部屋へご案内いたします」
「あ……はい。お願いします」
一礼して廊下に出てドアを閉める。
大公殿下のお姿が見えなくなると、私はやっと緊張を解いて大きく息を吐き出した。
挨拶しただけなのに、心の振れ幅が大きくて、なんだかすごく疲れた……。
そんな私を見てクロードさんがクスクスと笑うから、恥ずかしさをごまかすために「色々と、申し訳ありませんでした」と謝り、私は苦笑いした。