男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
夜明け前に、たった四人でこっそりと都を離れたというのに、もう早、気付かれるなんて……。
これは前々から殿下を監視して、なにかのチャンスがあればと、狙っていたとしか思えない。
脳裏に浮かんだのは、かつて聞いたバルドン公爵の言葉だ。
『操ることのできない駒は要らんのだよ、アミルカーレ……』
エリーヌ嬢を妻に迎えないどころか、バルドン公爵に決別宣言を叩きつけて、今と過去のふたつの罪をつまびらかにしようとしている殿下。
バルドン公爵にとっては、もう殿下は用済みで、操れないのなら消してしまおうとしているのか……。
青ざめる私は救護室を飛び出して通路を走り、団長室のドアを開けた。
しかし、そこは無人。
慌てて引き返すと、今度は闘技場に駆け込む。
広い闘技場では、青の騎士たち三十名ほどが剣をぶつけ合ったり、体を鍛えたりと、訓練に励んでいた。
その中に若手の騎士に稽古をつけてあげている、クレマン団長の姿もあった。
私はすぐさま駆け寄って、真剣を交えるふたりの間に飛び込んだ。
「ステファン!? なにをしている、危ないぞ。
もう少しで斬るところでーー」
「クレマン団長、大変です!
バルドン公爵が殿下のお命を狙っています!」