男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました

表情を険しくするクレマン団長に伝書鳩の文を見せ、早口で意味を説明する。

聞き終えた団長はすぐに詰所内の全騎士を招集して、四十名ほどを班分けし、殿下の一行を追うように指令を出してくれた。

しかし、その中に私は入れてもらえず……。


「僕も行かせて下さい!」と、掴みかかる勢いで訴えても、許してもらえない。


「ステファンは詰所で番をしていろ」

「なぜ僕だけ!?」

「殿下のご命令だ。今朝、出がけの際に、なにがあってもステファンだけは城から出すなと、きつく言われておる。命令に従うんだ」


唇を噛み締めて俯く私に構わず、クレマン団長は騎士たちを周囲に集めると、地図を広げて追いかけるルートなどを指示していた。


輪の外から、それを見つめる私の中には、沸々と怒りが沸き上がる。

みんなして私を邪魔者扱いして……留守番なんて、そんな安全な命令に従ってられるか!


ひとり闘技場を出た私は、仮眠室に置いてあった誰かの手袋とフード付きのマントを勝手に借りて身支度する。

そして詰所の裏口から外に出た。

そこにあるのは広い馬場と大きな厩舎。

何十頭もの馬が繋がれている中で、脚力と持久力のある栗毛の雄馬を選んで、手早く鞍や手綱をつける。

馬を外に出して、その背に飛び乗ると、馬の腹を強く蹴飛ばした。


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