男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
そのとき、戦闘服の男のひとりが、殿下の後ろに回り込んで斬りかかってきた。
「アミル、後ろ!」
クロードさんの声に反応して殿下は素早く身を翻し、男の剣は殿下の濃紺のマントを斬り裂いただけだった。
振り下ろされたその剣を蹴り上げて、遠くに飛ばした殿下は、男のみぞおちを、剣の柄で強く突く。
男は呻くこともできずに地面に突っ伏し、動かなくなったが、別の男がすぐに殿下に斬りかかった。
殿下が戦っている間に私は、クロードさんに手綱を握らせていて、早口で言った。
「クレマン団長率いる一団が、すぐそこまで来ていることと思います。でも森の中の一本道を直進してしまうかもしれないので、クロードさんはこの場所を知らせに行って下さい」
そう言うや否や飛び降りて、馬の尻を蹴飛ばした。
驚いた馬が全力で走り出し、クロードさんの姿も木々に隠れてすぐに見えなくなった。
剣を抜いた私に、男のひとりが斬りかかってくる。
それを気合充分で受け止めようとした私だが、殿下が弾き返して、私を守るように左腕で抱き寄せた。