男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
言われた通り、真正面から襲い来る敵の斬撃を受け止め、張り切って剣を振るう私。
気持ちが高ぶるけれど、慎重に……。
殿下の背中を守っているのだから、やられる訳にいかないのだ。
かつてないほどの集中力と力を発揮して戦う私の剣先は、相手の服を斬り裂いていた。
殿下は横から襲ってきた男を薙ぎ払い、正面からくる男を蹴り飛ばしていた。
骨の砕ける鈍い音が聞こえ、敵はまたひとり、雪に伏す。
ジェフロアさんと副団長も確実に相手の数を減らしていて、人数とは逆に戦闘力では、こっちが優勢のような気がしていた。
勝てないことを悟ったのか、一味のリーダーと思われる髭面の男が、「引くぞ!」と悔しそうに声を上げた。
立っている敵の全員が、私たちから離れて逃げ出そうとした、そのとき、ピーと聞き覚えのある笛の音が響いた。
それは追跡対象者を見つけたときに、他の騎士たちに知らせるための青の騎士の笛。
木立の奥から何十頭もの馬が現れて、散り散りに逃げていく悪党たちを、騎士団が追って行った。