男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました

捕まるのは時間の問題で、もう安心……。


ホッとして剣を鞘に戻して辺りを見回すと、倒れている敵兵は十五人ほどもいた。

こちらの負傷者はクロードさんと、二頭の馬。

クロードさんは手当てをしてもらっただろうか?

可哀想な二頭の馬は、後で弔ってあげないと……。

そんなことを考えていたら、殿下に腕を強く引っ張られて、その広い胸の中に飛び込むこととなった。


抱きしめてもらえるのは嬉しいが、近くにはジェフロアさんと副団長がいる。

ふたりは倒した男たちに息があるかどうかを確かめて回っているようだが、その手を止めて、驚いた顔をこっちに向けていた。

私と目が合うと、ふたりして慌てたように目を逸らし、確認作業の続きに戻っていて……。


「殿下、あの、今はマズイのでは……」


男色家疑惑が再燃するという意味で、注意したのだが、私に回される腕は解けない。

強く抱きしめられて、耳に安堵の息が掛かった。


「正直言うと、助かった。お前が来なければ、クロードが危なかった。感謝する」


< 322 / 355 >

この作品をシェア

pagetop