男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
殿下に当たらなくてよかった。
騎士として守れたことが、誇らしい……。
「ステファニーッ!!」
ドサリと雪の上に落ちた私は、悲鳴のような殿下の叫び声を聞いた。
雪に膝をついた殿下の腕に抱えられながら、二本目の矢を警戒して柏の木を睨む私。
しかし弓兵は、ジェフロアさんの投げた短剣を首に受け、木から落ちていた。
それを確認してから、やっと私は殿下の顔を仰ぎ見る。
美しい青い瞳には涙が溢れ、ポタリと私の頬に落ちてきた。
殿下が泣く姿を見るのは初めてだ。
いつも堂々としている殿下が、今ばかりは青ざめて動揺を隠せずにいる。
私を支える手も微かに震えているようだ。
「ステファニー、死ぬな!
愛する者を二度までも失いたくない。頼むから生きてくれ。これは命令だ!」
「殿、下……」
ごめんなさい……。
その命令にも、私は背くことになりそうです……。
矢が刺さっているのは心臓の位置なのだから、間もなく私は死ぬことだろう。
でも、愛する人に看取られて逝けるなら怖くない。
目を閉じて、心安らかに心臓が止まる瞬間を待っていたのだが……あれ?と様子がおかしいことにやっと気づいた。