男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
私の命を救ってくれたのは、アベル様のロザリオ……。
それを知ると、偶然ではなく、不思議な力に守られた気がしてくる。
アベル様はきっと、殿下を悲しませたくなかったのだろう。
自分が死んでしまったことで、兄がずっと苦しみの中にいることを、天国で心配して見ていたのかもしれない。
そう思うと、今も思い合う、兄弟の絆に胸が熱くなる。
それと同時に、私に対する殿下の愛情を強く感じた。
大切なアベル様のロザリオを与えられるほどに、私は愛され、必要とされているんだ……。
剣で活躍できなくとも、私は邪魔でも役立たずでも、ないみたい……。
笑えないほどに嬉しくて、涙を溢れさせる私の周囲には、徐々に人が多くなってきた。
逃げた者たちを捕らえた青の騎士が、このポッカリと開けた場所に次々と戻ってきたのだ。
命令待ちというように、その視線が殿下に向いているのが分かる。
雪の上に座り込んでいる私たち。
涙を拭いて「みんな待ってますよ?」と伝えたら、膝立ちした殿下は口の端を吊り上げた。
「もう少し、待たせておく」
「え?」
殿下は右手でマントを広げ、私をスッポリと包み込んで隠した。
それから私の顎先を摘み、熱い口づけをくれる。
「愛してる」という、幸せな言葉も付けて……。