男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
それに加えて、物的証拠もある。
それは、ハミンが保護した伝書鳩。
傷が癒えて飛べるようになった鳩を空に放てば、まっすぐにバルドン家の鳩小屋に飛んで帰ったということだ。
殿下の暗殺を企てたことが明らかになれば、利権のおこぼれをもらっていた他の貴族たちも庇いようがなく、バルドン公爵……いや、バルドンは、爵位剥奪の上、離れ小島にある塔の中に幽閉されることになった。
都にあるバルドン家の屋敷と財産は没収となり、貿易会社は大公家が管理、運営することが決まった。
それによってバルドンがいなくとも、都の貴族や豪商たちは、これまで通りに富を得ることができそうで、不服を申し立てる者はいないみたい。
バルドンの子供たち、ロドリグとエリーヌ嬢は、今は西の外れにあるバルドン家所有の小さな屋敷にひっそりとこもって暮らしている。
それは殿下の温情だ。
父親の悪事に薄っすら気づいていても、加担はしていなかったということで、領地の全ては没収しなかった。
細々と暮らしていけるだけの土地を残してあげて、都に立ち入ることを禁止するだけの処分を下したのだ。