男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
邪視の件と、アベル様を事故に見せかけ殺害した罪は、結局、明らかにできずに終わり残念な結果となったが、殿下はこれで区切りをつけて、前を向くと決めたようだ。
バルドンを幽閉することで、仇をとったという気持ちになれているなら、それでいいと私も思う。
天国のアベル様だって、きっとそう思っているはず。
僕のことはもういいから、兄上は前を向いて歩いて下さいと。
後は、自責の念の象徴のような、あの黒い棒タイを外してくれたらいいのに……。
窓から見える水色の空に、殿下の姿を思い描いていた。
金刺繍のほどこされた藍色の上着に、黒いズボンとブーツ。
美しい銀色の髪に、透き通るような青い瞳は、力強く輝いて……。
会いたくて堪らなくなり、胸に痛みを覚えた。
レモン色のシンプルなドレス越しに、握りしめたのは、金のロザリオだ。
これが手元にある限り、私と殿下の心は繋がっていると思っていたけれど、会えない日々が一年以上になると、自信はゼロに近い。
増していくのは不安ばかりで……。