男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
暗殺騒ぎの後、すぐに私は実家に戻るように、殿下に命じられた。
矢に倒れ、命を落とすと思わせたことが余程こたえたらしく、『バルドンの件が片付き、都が安定するまで家に帰れ』と……。
教育を受ける義務があることを理由に、それを拒んだ私だが、代わりに兄のステファンが城に行くことになってしまった。
前は、怯えて泣いて、断固拒否を貫いていたステファンだったのに、喜んで出発する姿には呆れたものだ。
リリィに恋をして、文通では満足できなくなり、会いたい気持ちが臆病さに勝ったというのは、微笑ましくもあるけれど……。
ステファンから定期的に送られてくる手紙によると、双子の入れ替わりに気付かれず、上手くごまかせているみたい。
暗殺の件で怪我を負ったということにされ、騎士団からは退団することとなったそうだ。
私としては不満だけど、ステファンに騎士が務まるはずはないので、仕方ない。
嘘の怪我の理由を使って、剣術や乗馬の授業も見学しているそうだし、後は黙って座って勉強しているだけなら、私との違いはほとんどないだろう。