男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
次に背中まで伸びている金色の髪をひとつに束ね、ふと思う。
そうだ、髪も切ってスッキリしようか?
左手で髪の束を掴み、右手で剣を引き抜こうとしたが、母の顔を思い出して切るのをやめた。
女らしい格好をし始めた私を、母は泣くほど喜んだ。
男装に戻ればガッカリさせることだろうけど、髪まで切ったら、寝込んでしまいそうな予感がして。
髪は長いままでも、久し振りに男の格好をして帯剣すれば、ジメジメしていた心が、幾らか晴れやかになった。
すると、部屋にこもって手紙を書こうとした気持ちは完全に消え失せ、体を動かしたくてウズウズしてくる。
自室を出ると、階段を駆け下りて、廊下を裏口の方へと走って行く。
「お嬢様、ちょうどお食事ができたところで……まぁ、女らしくするのはやめたんですか!?」
調理場から顔だけ出して、驚いたように言ったのは古参のメイドのニーナ。
「ちょっと運動してくる。食事は後で食べるから取っておいてね」
駆ける足を止めずに答えて、私は調理場横の裏口から外へ飛び出した。