男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
手入れが行き届いているとは言えない我が家の裏庭は、その奥に広がる林と繋がってしまっている。
一応、鉄柵はあるものの、蔦が巻きついてその存在は分かりにくい。
芝生もすっかり雑草に侵食され、タンポポや菜の花が咲き乱れて、野原のようだ。
落ちぶれた田舎貴族らしい裏庭で、剣を振り回す私。
仮想の敵と剣を交えて、楽しく戦っているのだ。
心地よい汗が流れてくる頃、ふと異変に気づき、手を止めた。
なんだが屋敷内が騒ついているような……。
開け放した窓から、慌てたような父の声と、使用人たちのバタバタと走る足音が聞こえてくる。
「ステファニー、どこ行ったのー!」と叫ぶ母の声も聞こえてきた。
さては、ニーナが告げ口したな?
また私が男装して剣を振り回していると。
以前は『元気なお嬢様が私は好きですよ』と言ってくれたニーナなのに、近頃は両親と一緒になって『そろそろ花嫁修行を』と言ってくる。
十八歳になった私は結婚適齢期。
心配してくれる気持ちは分かるけれど、味方がひとり減った気分で面白くない。