男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
半分だけ引き抜いた剣を、鞘に戻す殿下。
私の剣は鞘に納められることなく、手から離れてポトリと地面に落ちた。
諦めようとしていたところだったから、驚きのあまりに、まだ喜ぶことができずにいた。
一年と少し前に別れた日と、少しも違わぬ殿下が目の前に立っていた。
本物だろうかと目を疑い、幻ではないかとさえ、怪しんでしまう。
そっと手を伸ばして触れようとしたら、その手を引っ張られて、胸の中に飛び込むこととなった。
強く抱きしめてもらって、やっと喜びが湧いてくる。
迎えに来てくれた……。
私への愛情は、まだ殿下の心にあると思っていいんだよね……。
溢れ出した涙は、頬を伝うことなく、殿下の胸元に染みていく。
一年分の想いが溜まっていたはずなのに、言葉にならずに、咽び泣いていた。
泣き続けるだけの私の髪に鼻先を埋める殿下は、なぜか「おい」と不愉快そうな声を出す。
「さっき、なんか言ってたな。
俺のことなど忘れてしまえばいいと、聞こえたんだが、どういうことだ?」
「あ……」