男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
田舎者だと馬鹿にされる分には、それほど気にならないが、それが理由で私の知性や能力が他の貴族に劣ると思われるのは、悔しくて腹が立つ。
家では幼い頃から家庭教師がついて、勉強していた。
じっとしていられなくて、逃げ出したことも、何度もあったけれど……。
エドガーの席は、私のすぐ右隣。
叱られている私をニヤニヤした目で見て、肩までの赤茶の巻き毛を指先に絡ませながら、彼は『バーカ』と声に出さずに口を動かす。
思わず睨み返したら、教師にまた机を叩かれた。
「ステファン殿、そんな目を私に向ける理由はなんですかな?」
「いえ、先生を睨んだわけじゃなくーー」
「私の授業は聞くに足らんということですかな。宜しい。ならば、私の代わりにこのページを音読し、他の皆様に訳して差し上げなされ」
マズイと思ったのは、教師のご機嫌を損ねたことについてだ。
きっと私の授業態度や成績は、大公殿下に報告されることだろう。
大公殿下に悪い印象を持たれたら、罰を与えられるかもしれないし、外出禁止などの制限を与えられたら困ると思っていた。