男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました

キスができなかった殿下は、小さく舌打ちして、私の頬から手を離した。

それから私の腰に手を添えて、みんなの方へと歩みを促す。


殿下との抱擁を見られた私は、恥ずかしくて家族の顔は見れずにクロードさんたちの方を向いたが、ジャコブとジェフロアさんが微笑んでいることに戸惑っていた。


「あの、殿下、もしかして私の事情は……」


殿下が答える前に、ジャコブの声を聞いた。


「ステファン様、いえ、今はステファニー様ですね。お久しぶりです。心配せずとも、全て知っておりますのでご安心を」


ジェフロアさんも笑って言う。


「私が気づいたのは、暗殺団との戦いの最中に、殿下があなたの本当の名を呼んでしまったからですが、ジャコブはとっくの昔に気づいていたそうですよ」

「えっ、とっくの昔って!?」


驚いてジャコブを見ると、彼の頬に薄っすらと赤みが差し、苦笑いしていた。


「初めから女性のようだと思っておりましたが、確信したのは、殿下の寝室の続き間に移動となったときですね。仲の良すぎるおふたりに、ああ、やっぱりそういうことかと」


ジャコブにつられて、私の頬も熱くなる。

そんなに前から女と気づかれていたなんて……。

しかも気づいた理由が、それとは。

私と殿下が恋仲だということも、ジャコブは知っていたということなのか。

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