男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
恥ずかしさをごまかしたくて、「気づいていたなら早く言ってよ」と文句を言えば、反対に痛いところを突かれた。
「いつ秘密を教えて下さるのかと、待っていたのは私の方です。結局、最後まで打ち明けてもらえずに、随分と寂しい気分になりました」
非難めいたジャコブの顔と言葉に、私は肩を竦める。
そう言われたら……「ごめんね」と謝るしかない。
私だってジャコブには話したかったのに、殿下がダメだと言うから、従うしかなかったのだけれど。
ジャコブに責められて、恨めしげに殿下を見上げれば、「そんな昔の話はもういいだろ」と軽く流された。
「話すべきことは、これからのことだ」
うちの屋敷の者は、総じてまだ驚きの中にいる。
殿下は、目を瞬かせている父に向き直ると、有無を言わせぬ、堂々たる声で言った。
「フォーレル伯爵、さきほど申し込んだ通り、ステファニーは我が妃として城に迎えるつもりだ。異存はないな?」
殿下が今日、うちにやって来た目的は、結婚の正式な申し入れをするためだ。
貴族の婚姻には、家長の同意は不可欠なのだから。