男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました

こんな田舎に大公殿下がやって来ただけでも驚きなのに、私なんかを妻にもらいたいと言われては、父も母も使用人たちも、度肝を抜かしたことだろう。


そんな驚きの波は、今、やっと引きつつあるみたい。

私と殿下の親しげな様子に、ようやく事実を飲み込めたというところだろうか……。


『異存はないな?』との殿下の問いかけに、両親はなぜか顔を見合わせ、困り顔。

喜ぶ素振りは少しも見られなかった。


「どうした? なにか問題があるなら言ってくれ」と殿下が促すと、父が恐縮しながら申し出る。


「恥ずかしながら、うちの娘は、じゃじゃ馬なんて可愛いものではなく、暴れ馬なのです。
とても大公妃が務まるとは思えません。思い直された方が、よろしいかと……」


まさかの反対に慌てる私。

あれだけ『嫁の貰い手がない』だの、『嫁に行けるように淑やかにしなさい』だのと煩かったのに、殿下の元に嫁ぐのはダメなんて……。

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