男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
「そんな……」と父に言い返そうとした私だが、殿下が声を上げて笑い出すから、反論の機会を失う。
「じゃじゃ馬ではなく暴れ馬か! なるほどな」
「そうでございます。もう、ほとほと手を焼いておりまして。ご迷惑をおかけするのは、目に見えております。嫁いでからの返品となりましたら、ステファニーが可哀想ですし……」
迷惑をかけて返品されるよりは、最初から断った方が私のためだと、父は親心として考えているみたい。
暴れ馬という説明に殿下は納得していたから、この話はなかったことにしてもらえるのではないかと、期待もしているようで、父はホッとしたように頬を緩めていた。
しかし殿下は、私の肩を抱き寄せて、見せつけるように頬に口づけた。
「ステファニーにかけられる迷惑なら、さぞや楽しいことだろう。暴れる馬ほど、手懐けたときの喜びは格別だ」
「し、しかし、殿下!」
「フォーレル伯爵、俺はこのままのステファニーを愛している。元気な娘に育ててくれたことを感謝しよう。一生涯、慈しみ、返すことはないと誓うから、どうか祝福してほしい」