男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
父も母も、もう反対はしなかった。
この結婚の申し入れが、殿下の気まぐれではないと分かって、安心したようだ。
「お父様、お母様……」
少し寂しそうな顔をして私を見る父は、何度も頷いて、母はレースのハンカチが絞れそうなほどの涙を流して、私の結婚を喜んでくれた。
たった五人のうちの使用人たちは、手に手を取り合って、小躍りしている。
「お嬢様、おめでとうございます!」
「大公殿下、ステファニー様、万歳!」
みんな、私が生まれたときから側にいてくれた古参の使用人ばかり。
大した給料も払えないフォーレル家を支えてくれる、家族と同じように大切な人たちだ。
そんなみんなに祝福されて、頬を綻ばせていたら、殿下が意味ありげな咳払いをした。
その意味を誰より早く理解したのは、やはりクロードさんで、殿下に代わって指示を出す。
「皆様、お喜びのところ申し訳ございませんが、お屋敷の中にお戻り下さい。殿下は我慢の限界のようです。
ここからは、どうか、ふたりきりに」