男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
泣いていたり、喜んでいたり、ニヤニヤしていたりする面々が、裏口から屋敷の中に引きあげて行き、最後にクロードさんが「ごゆっくり」と言葉を残してドアを閉めた。
急に静かになった裏庭に、強い春風が吹き抜ける。
さっきは目茶苦茶に剣を振り回して暴れていたから、髪を結わえていたリボンが緩んでいたらしく、解けて風に飛ばされた。
私の金色の髪も横になびき、殿下が指で梳いて整えてくれた。
「伸びたな」とクスリ、笑われる。
「一年以上も放っとくんですから、髪も伸びます」
「これでも色々と、急いだつもりだったが……待たされているお前にとっては、長い一年だったことだろうな。遅くなって、すまなかった」
殿下が私を抱き寄せてくれて、私も広い背中にそっと腕を回した。
銀の髪から香るバラの香りを嗅ぐと、待たされた間の切なさは薄れ行き、代わりに感謝の気持ちが込み上げる。